4-4 侵害訴訟例(類似とされた裁判例)
両意匠の物品の類否判断は、機能と用途に共通性があるか否か で判断されます。
実際の侵害訴訟裁判で 類似 とされた例を見ていきましょう。
1.類似とされた裁判例(スピーカ)
東京地方裁判所 平成18年(ワ)第19650号
登録意匠の物品「増幅器付きスピーカ」と対象製品の「増幅器」は類似であり、形態の差異は両意匠の共通性や類似性を凌駕するものではないとし、両意匠は類似すると判断された。
【登録意匠】


【対象製品】


(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)
2.類似とされた裁判例(置物)
京都地方裁判所 平成11年(ワ)第58号
両意匠の物品は「置物」(まねき猫)の点で一致します。
まねき猫は、需要者を基準とすると、正面からの全体観察により看者の最も注意を惹く構成態様が要部であるところ、公知意匠を考慮すると、本件意匠の要部は、大きく口を開けて笑っている表情にあるというべきであり、そうすると、両意匠は全体として美感を共通にするとし、両意匠(登録意匠1と対象製品1の両意匠、及び、登録意匠2と対象製品2の両意匠それぞれ)は類似すると判断されました。
【登録意匠1】


【対象製品1】


【登録意匠2】


【対象製品2】


(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)
3.類似とされた裁判例(マンホール蓋受枠)
大阪地方裁判所 平成19年(ワ)第2366号
両意匠の物品は「マンホール蓋受枠」であり同一です。
両意匠の相違は、微小な部分のわずかな相違に過ぎず、それによって意匠全体の美感を異にするに至るものとは認められないとし、両意匠(登録意匠1と対象製品1a、1bの両意匠、及び、登録意匠2と対象製品2a、2bの両意匠それぞれ)は類似すると判断されました。
【登録意匠1】

【対象製品1a】【対象製品1b】


【登録意匠2】

【対象製品2a】【対象製品2b】


(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)
4.類似とされた裁判例(盗難防止用製品収納ケース)
東京地方裁判所 平成15年(ワ)第7936号
(控訴棄却 東京高等裁判所 平成16年(ネ)第628号)
登録意匠と対象製品の両意匠の物品は「盗難防止用製品収納ケース」(DVD等の盗難防止ケース)であり同一です。両意匠の相違点は、微細なものであり、全体として同一の美感を与えるものであり、両意匠は類似すると判断されました。
なお、本件は、被告側に先使用権が認められたため、実際には原告側の請求は棄却されています。
また、合わせて、登録意匠には無効理由(出願前の公知意匠(製品)に基づいて創作が容易である)があるとして、権利行使は認められないと判断されました。
【登録意匠】


【対象製品】


【公知意匠】


(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)