4-3 審決取消訴訟例(非類似とされた裁判例)


両意匠の物品の類否判断は、機能と用途に共通性があるか否か で判断されます。
実際の審決取消訴訟裁判で 非類似 とされた例を見ていきましょう。

1.非類似とされた裁判例(自動二輪車用タイヤ)

知的財産高等裁判所 平成19年(行ケ)第10344号

両意匠ともに、物品は「自動二輪車用タイヤ」で同一です。

しかし、出願意匠と、引用意匠は、溝(中央溝、主傾斜溝)の配置や相互の位置関係は共通するが、その具体的な構成や配置については異なる美感を与えるとし両意匠は類似していないと判断されました

なお、本件は、拒絶査定不服審判において、「類似する」(=したがって拒絶である)と認定されたが、裁判所において、その判断が覆った例です。

【出願意匠】
【引用意匠】

(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)

2.非類似とされた裁判例(ビールピッチャー)

知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10251号

両意匠ともに、物品は「ビールピッチャー」で同一です。

しかし、出願意匠と、引用意匠は、基本的な構成態様において共通する点を有するが、その具体的な形状態様において、看者に異なる美感を与えるとし、両意匠は類似していないと判断されました

なお、本件は、拒絶査定不服審判において、「類似する」(=したがって拒絶である)と認定されましたが、裁判所において、その判断が覆った例です。

*出願意匠は、点線部を除く部分意匠である。

【引用意匠】

(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)

3.非類似とされた裁判例(貼り薬)

知的財産高等裁判所 平成21年(行ケ)第10209号

両意匠ともに、物品は「貼り薬」で同一です。

本件意匠と引用意匠とは、本件意匠は左右の剥離シートの帯状部を設けているのに対し、引用意匠は帯状部を設けていない点、および、本件意匠は中央分離帯部の剥離シートを青色とし、左右の剥離シートの帯状部を水色としているのに対し、引用意匠はそのいずれもが透明である点で差異があります。

しかし、本件意匠は、上記構成により、背割り線の形状を際立たせ、機能的にも左右の剥離シートの両部分を明瞭に見分けることができるものであり、全体として需要者である使用者に与える影響が大きく異なり、両意匠は類似していないと判断されました

【出願意匠】

*出願意匠は、点線部を除く部分意匠である。

【引用意匠】

(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)