4-5 侵害訴訟例(非類似とされた裁判例)


両意匠の物品の類否判断は、機能と用途に共通性があるか否か で判断されます。
実際の侵害訴訟裁判で 非類似 とされた例を見ていきましょう。

1.非類似とされた裁判例(手提げかご)

大阪地方裁判所 平成16年(ワ)第14355号
(控訴棄却 大阪高等裁判所 平成18年(ネ)第448号)

両意匠ともに、物品は「手提げかご」で同一。

しかし、登録意匠出願時の公知意匠などを考慮すると、対象製品は、登録意匠と共通点を有するが、その共通点は登録意匠の重要な部分すべて含むものではなく、重要な部分にも大きな相違点があり、全体として相違点が共通点を凌駕するため、美観が異なるとし、両意匠は類似していないと判断されました

【登録意匠】
【対象製品】

(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)

2.非類似とされた裁判例(換気口用フィルタ)

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第26828号 
(控訴棄却 東京高等裁判所 平成15年(ネ)第6117号)

両意匠ともに、物品は「換気口用フィルタ」で同一です。

本件意匠と対象製品とは、正面開口部の位置及び形状において大きく相違し、両意匠には意匠としての創作性が認められ、かつ、看者の注意を引く部分において大きく相違しており、この相違点は、両意匠の共通点を凌駕し、両意匠は全体として美感を異なるとし、両意匠は類似していないと判断されました

【登録意匠】
【対象製品】

(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)

3.非類似とされた裁判例(長靴)

大阪地方裁判所 平成21年(ワ)第2726号
(控訴棄却 大阪高等裁判所 平成21年(ネ)第3051号)

両意匠ともに、物品は「長靴」(女性用ブーツ)で同一です。

本件意匠と対象製品とは、共通点を有するが、当該共通点はロングブーツの基本的形態であり、要部においては、顕著な相違点があるため、その他の共通点を考慮しても、全体として相違点が共通点を凌駕し、両意匠は美感を異にするとし、両意匠は類似していないと判断されました。

【登録意匠】
【対象製品】

4.非類似とされた裁判例(布団用除湿具)

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第17577号
(控訴棄却 東京高等裁判所 平成16年(ネ)第3517号)

両意匠(登録意匠と対象製品1,2)ともに、物品は「布団用除湿具」(すのこ状枠体に引き出しが設けられたもの)で同一です。

本件意匠と対象製品1、2とは、共通点(すのこ状の形状)を有するが、当該共通点は「布団用除湿具」において特徴的部分とはいえず、引き出しの形状が要部であるといえ、引き出しの底部の貫通孔の有無、仕切りの有無において顕著な相違点があるため、美感上異なる印象を与えるものであり、両意匠は類似していないと判断されました。

【登録意匠】
【対象製品1】
【対象製品2】

(図および写真は、裁判所HPの判例検索システムの資料、特許庁IPDLより抜粋)