5-2 各国の意匠制度
1.ヨーロッパへの意匠登録出願
欧州には「欧州共同体意匠制度」が存在します。欧州共同体意匠制度とは、 一つの出願で、欧州共同体に加盟する(EU加盟国)27カ国に対しては一括して出願を行うことができます。
なお、欧州共同体意匠制度においては、同一のロカルノ分類に属する意匠であれば、複数の意匠を一出願で出願することもできます。
欧州共同体意匠制度には、大きく分けて2つの制度があります
A.無登録共同体意匠制度
意匠が利用可能な状態となってから3年間は出願手続きを行うことなく、デッドコピーから保護されます。(日本においては、不正競争防止法2条1項3号に該当する制度)
B.登録共同体意匠制度
出願により審査が行われます。但し、審査内容は、方式的な審査と、公序良俗に反しないか否かなどの一定の要件のみ審査されます。要件を満たせば登録がなされます。存続期間は、出願から最大25年間です。また、日本と同様に、物品の部分についても意匠を受けることができます。ただし、修理用部品のようなMust Much意匠については、登録は認められるものの修理目的での修理部品の使用には及びません。その他、装飾やロゴも保護されます。
なお、1出願で欧州共同体全体をカバーすることができる反面、意匠が無効とされると、欧州共同体全域で無効の効果が生じます。
2.中国の意匠制度
原則無審査登録制度です。したがって、形式的な出願の要件を満たせば登録がなされます。新規制を有しない場合には、登録後に無効とされる場合があります。但し、公知(世間に知られる状態)になったときから6か月以内に出願する場合には、所定の手続きのもと、新規性喪失の例外の規定を利用することができます。存続期間は、出願から10年間です。また、部分意匠制度はありません。
なお、出願時には、意匠の名称、意匠物品の用途、意匠の特徴、意匠の特徴を最もよく表す図面等を記載する必要があります。
また、最大10件までの類似意匠を1出願で出願が可能です。
3.韓国の意匠制度
一部の物品を除き、審査登録制度が適用されます。したがって、創作非容易性などの要件も審査されます。要件を満たせば登録がなされます。公知(世間に知られる状態)になったときから6か月以内に出願する場合には、所定の手続きのもと、新規性喪失の例外の規定を利用することができます。なお、衣服や寝具類の一部の物品は、無審査登録されます。
<無審査登録対象>
・衣服等
・寝具等
・事務用紙
・包装紙等
・織物紙
無審査登録出願は、等しい大分類の物品に対して、20個までの意匠は、複数の意匠を一出願とすることができます。
韓国では、立体物品では斜視図が必須となります。また、意匠物品とともに、意匠の説明、創作内容の要点の記載が必須となります。存続期間は、出願から15年間です。また、部分意匠制度と同様の制度があります。
4.アメリカ合衆国の意匠制度
審査登録制度です。したがって、創作非容易性などの要件も審査されます。要件を満たせば登録がなされます。公知(世間に知られる状態)になったときから1年以内に出願する場合には、所定の手続きのもと、新規性喪失の例外の規定を利用することができます。
なお、米国における意匠出願日より6か月を超える以前に外国において出願され、米国意匠出願の前に登録されている場合には、意匠登録を受けることができません。
存続期間は、登録から14年間です。また、部分についても意匠特許(アメリカでは意匠は意匠特許として保護される)を受けることができます。
なお、米国においては、意匠図面には、ほとんどの場合陰影をつけることが要求されます。したがって、日本でおこなった意匠登録出願の図面は、そのままでは米国出願用に流用できず、米国出願用に修正する必要がある場合があります。
5.各国の意匠の審査制度比較
主要な国の、実体審査の有無をまとめました。
実体審査のない国では、意匠登録出願をしますと、実体審査が行われずにそのまま登録となります。
実体審査あり | 実体審査なし | |
---|---|---|
日本 | ○ | |
米国 | ○ | |
中国 | (意匠権評価報告書制度有) | ○ |
欧州 | ○ | |
韓国 | ○ | (一部審査なし)*1 |
台湾 | ○ | |
ロシア | ○ | |
インド | ○ | |
ブラジル | (審査請求可) | ○ |
タイ | ○ | |
マレーシア | ○ | |
インドネシア | ○ | |
香港 | ○ | |
フィリピン | (登録性調査請求可) | ○ |
シンガポール | ○ | |
ベトナム | ○ | |
UAE | ○ |